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東野圭吾の長編推理小説 新参者シリーズ 加賀恭一郎最後の作品と言われている 「祈りの幕が下りる時」

この作品はタイトルのとおり、東野圭吾のミステリー小説 『新参者』シリーズの最後の作品です。

テレビシリーズに続いて阿部寛さんが日本橋署の異動してきた加賀恭一郎氏を演じて映画化されました。

この作品は「新参者」の主人公・加賀恭一郎の母の死を通して彼の父との確執や幼い恭一郎を残して失踪した母へのわだかまりなど、これまで明らかにされなかった加賀自身の謎が明らかになり切ない物語となっています。

事件としては、彼の母親に関わっていた男性の死が複雑な人間関係とともに描かれています。

加賀の母親である田島百合子は仙台のアパートで心不全のため亡くなります。

そして、彼女の勤めていた仙台のスナック「スナックセブン」のママを通して加賀へ連絡が来ます。

この作品の中で出てくるのが、新参者の世界にもある日本橋を含む12の橋の名が書かれていたカレンダーでした。

そして、日本橋で行われている橋洗いの行事が事件の解決に関わってくるのです。

この物語の主人公は演出家の浅居博美、映画では松島菜々子が演じています。

彼女の中学生時代の同級生、押谷道子が彼女に会うために上京し殺害されます。

殺害現場となったアパートの住人・越川睦雄も行方不明となっています。

この越川睦雄が加賀の母親とつきあいがあるったことが判明していきます。

やがて捜査線上には舞台演出家の浅居博美が走査線上に浮かびあがってきます。

しかし、彼女には確かなアリバイがあり捜査は進展しません。

そして、加賀の従弟である松宮脩平が捜査を進めるめうちに遺留品のなかに先に述べた12の橋の名が書き込まれていたのを発見します。

浅居博美には人には言えない過去がありました。

父親との逃亡中に殺人を犯してしまい、それをかばうために父親は偽装自殺をし逃亡生活を続けることになりました。

二人が密かに会うために使ったのが、毎月のカレンダーに書かれていた橋でした。

直接逢うことが出来ないため二人は橋の両側で携帯電話を通じて川を挟んで話をするのでした。

そして、7月の橋洗いの写真に父親とのこの再会をするために来ていた博美が写っていました。

このことが事件の解決に繋がっていくのです。

この小説のなかで明美は曽根崎心中を新しい視点からミステリアス風の視点で仕上げた「異聞・曽根崎心中」というお芝居を明治座で公演中でした。

最愛の男に殺害されるお初と男女こそ逆でしたが、父・忠雄と博美の関係に繋がっていました。

忠雄はこの初日の舞台を見に来ているところを押谷道子に気づかれてしまったため道子を殺害してしまいます。

事件の前から剣道教室を通して博美と加賀は知り合いでした。

明美は父親が博美以外の心許せる存在であった加賀の母親・田島百合子の息子である加賀に会いたいと思い剣道教室を調べてみたのです。

そしてそれは自分自身の犯罪を加賀にあばかれてしまうという結果にもなってしまいます。

この作品は東日本大震災の発生後に書かれていますので、その頃の世相にも反映されています。

また、博美の父親のエピソードにからめて原発作業員の労働環境に対する問題にも触れていますので社会派小説としての一面もあるように思います。

二組の親子の生き方が交差して、人と人との出会いの影にどんな意味があるのか。子を思う親の心、親を慕う子供の心。こんな偶然とそしてこんな悲劇があるのかあっていいものなのかと思いながら読みました。

私としては小説の最後で、加賀と加賀の父を看取った看護士の金森登紀子のエピソードが心洗われるように思いました。

東野圭吾さんの小説は好きでしたのでけっこう読みましたが、たまに性描写や殺害の描写が生々しくて嫌になるものもありました。

そういう点でも、この「祈りの幕が下りる時」・「麒麟の翼」などの新参者シリーズは心に響くものがあり私の好きな小説です。