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第5回京都アニメーション大賞大賞受賞作、暁佳奈著『ヴァイオレット・エヴァ―ガーデン』を読んで

暁佳奈さんによるライトノベル、「ヴァイオレット・エヴァ―ガーデン」

2018年1月より、京都アニメーションによってアニメ化もされたこの作品。

出会いはアニメーションが先でしたが、あまりに気になって原作の小説、前編・後編・外伝の計三冊を一気に読みました。

文体は活字の苦手な人でも読みやすく、作品の世界に引き込まれ、情景がすぐに頭に浮かぶもので、さすがはライトノベルといったところか、小説というのは、こういう表現もできるのだ、と思わせる表現が盛り込まれていました。

というのも、例えば、黒背景に白抜き文字の表現などのページを効果的に用いられていたのですが、それがそのシーンやその話のメインの登場人物の心情をよく表していて、読みながらも読者である私の心情とシンクロしやすくなっている表現であると感じたのです。

アニメを先行して7話ほどみていたので、この小説を読んだ時に、「あ、こういう順番になっているんだな」という驚きもありました。

時系列順になっているわけではないので、各章ごとに異なる話ではありつつも、「ヴァイオレット」という少女をよく表している作品。

面白いのは、ヴァイオレットがどう思ったかということよりも、周りが彼女に対して抱く感情などを表現することで、ヴァイオレット・エヴァ―ガーデンという人物像を描いている章が多いというところです。

ヴァイオレット自身は、ある時点以前の記憶が一切ない、しかも、記憶がある時点以降は人の命令によって動く人物であるため、ある種の無色な人物であったともとれるのですが、そのヴァイオレットが色づいていく様子を、ヴァイオレット以外の人物たちの視点を通して描かれている。というところがとても面白かったし、よりヴァイオレット・エヴァ―ガーデンはどんな子なんだろう、と気になっていきました。

どのお話もとても面白く、涙を誘う話なのですが、一番泣かされたのが『少女と自動手記人形』です。

アン・マグノリアという少女と、その母親のクラーラ・マグノリアとの話。

依頼人は母親のクラーラで、病気のため先が長くないことを知ったクラーラが、自身の死後、たった一人残されてしまう娘のために、何十通もの手紙をヴァイオレットと残していくストーリー。

娘のアンは、幼いながらに母親の病を受け止め、母親との大切な時間を奪われてしまうことをとても忌避していた。

見舞いにもこない誰かに手紙を書くくらいならば、自分と一緒にいてほしいとこいねがう姿にも胸をうたれましたが、何より母親の愛情をものすごく深く感じたのです。

母親の手紙の宛先は、物語を読み進める序盤で想像ができていたのですが、それが分かっていてもなお、というよりも分かっているからこそ尚更、胸が苦しく、涙なしには読めない作品となりました。

母親亡き後、誕生日が来るたびに届く手紙には、その愛情が詰まっていて、それを引き出したのは、かつて無色であった、ヴァイオレット・エヴァ―ガーデンである。

その流れがとても美しいとも感じました。

アニメでは少々表現の都合上変わっていた話もありました。

『青年と自動手記人形』

これはまさに戦地となっている場へヴァイオレットが派遣される話ですが、この青年エイダンにヴァイオレットが最期にしてあげる出来事が、アニメでは表現されていなかったのが非常に残念であると感じるほどに、「ヴァイオレット・エヴァ―ガーデン」という人物を描いている行動だったと思っています。

エイダンの死後、手紙と、その遺体を故郷へと届ける。

遺体を故郷へと届ける行為の是非は人それぞれかとは思うけれど、エイダンが願った「マリアのもとに帰りたい」という願いを叶えること、そして、普通ならば戦争で亡くなる際に遺体がもどってくることなどは到底ありえることではないということから、これはマリアたち手紙を受け取った側からすれば、本当に奇跡のようだと思うのです。

死なせてしまった、間に合わなかったと後悔するヴァイオレットに、マリアは「ありがとう」という言葉を贈る。

「届かなくていい想いはない」とするこの「ヴァイオレット・エヴァ―ガーデン」の世界で、それが分かりやすく表現された、とても印象的な話となりました。

そして、この作品で何より大好きなのがヴァイオレット・エヴァ―ガーデンとギルベルト・ブーゲンビリアの話です。

ギルベルト少佐が、ヴァイオレットを守るために、ただただ幸せを願うあまり、自身が生きていることを隠し、離れた場所に置いておく行為は、分かるけれど分かってやりたくない、という気持ちで読み進めていました。

ヴァイオレットにギルベルト少佐の存在が必要であることは明白で、たとえどんなに身に危険が訪れることがあっても、ギルベルト少佐がいないことに比べたら、些末でしかないというのは分かりきっていたからです。

だから、ギルベルトが生きていることが分かったとき、ただひたすらに、ヴァイオレットとの再会を願い、ギルベルトと再会できた場面では、ヴァイオレットと一緒になって、幸せな気持ちに包まれました。

外伝では再会の後、ギルベルトと過ごす日々の描写も描かれており、それを気にくわないと感じているベネディクトとは逆に、大変幸せな気持ちにしていただけて、作者暁佳奈さんに大いに感謝したことを覚えています。

ヴァイオレット・エヴァ―ガーデンは、想いをのせて、手紙を書き、届けるということを通して、愛情の表現というものを描いていたように思います。

読了後はとても暖かな気持ちに包まれ、たった3冊で素敵な世界に触れさせていただけるこの作品を、周りにもたくさん進めていきたいと思っています。