たのしす

二郎のスープ作りの秘密に迫るはずが一言もラーメンに触れてないブログ

男性は過去の恋愛を過去のものと割り切れず現在も過去の一部を引きずって生きてるものだと思います

20歳の大学生のころBARでバイトを始めました。BARの店長に用事を頼まれBARの近くにあるラウンジのオーナーに届け物を持って行きました。ラウンジの入り口まで来た時、ちょうど店内からお客さんとスタッフの娘が見送りに出てきました。そのお客さんはスタッフの娘の下半身に自分の下半身を押し当てて、後ろからハグするようなかたちで、二階のテラスの上から二人で一階を眺めていました。そのスタッフの娘は特に抵抗するような素振りもみせず、無表情で一階を眺めていました。「かわいい娘だな。でもそこまでしなくてもいいじゃないか」というのが第一印象でした。

数日後、そのラウンジのオーナーとそのスタッフの娘が仕事終わりでバイト先のBARにやってきました。顔なじみのBARの店長と私が呼ばれてテーブルで4人で飲むことになりました。お酒もすすみ、みんなでゲームしようということになりました。ジャンケンで勝った順番で氷を口移ししていくゲームです。男性同士が口移しすると時はみんな笑いながら盛り上がりますが、女性はその娘一人。明らかに不利です。でも嫌な顔ひとつせず次々と氷を口移しされていく彼女の退廃的は様子を見て切ない気持ちになると同時に危なっかしい気持ちにもなりました。

それからまた数日が経ち、彼女が一人でバイト先のBARにやってきました。彼女は「一杯どうぞ」と私に言って一緒に飲んでいました。「何かお気に入りの隠れ家見つけた気分」と言っていました。彼女はそれからかなり飲んでいろいろなことを言っていました。「自分は在日韓国人の三世だから在日居留許可証がないと日本に住めない」「韓国に親が勝手に決めたいいなずけがいる」「男運が悪くろくな男に引っかからない」と寂しさを吐露していました。BARの閉店時間になり、彼女のマンションまで送って行ってと言われ、車でマンションまで送りました。彼女のマンションの駐車場にはドイツ車のゴルフが停まっていたので、別の駐車場に車を停めて彼女を起こしても爆睡して全く起きないので、あきらめてシートを倒して私も寝ました。

昼前に二人で起きて「昨日ゴメンね。私お酒飲んで寝たら全く起きないから」と謝ってきました。「ぜんぜんいいですよ」と答えました。「お詫びに朝ごはん食べてく?」と聞かれ、「はい」と答え彼女の部屋に入りました。ダイニングに男性ものと思われる荷物やダンボールが積み上げられ、ドイツ車ゴルフのエアロ部分なんかもありました。その荷物には触れず、彼女が作ってくれたお味噌汁を二人で食べました。「一味唐辛子をお味噌汁に入れると美味しいよ」と彼女は笑いながら言っていました。

それからなんとなく付き合うような感じになり、BARのバイトが終わると彼女のマンションにいき、一緒にお風呂に入り、一緒に寝て、一緒にご飯を食べて、夕方自分のマンションに服だけ着替えに帰る生活になりました。彼女は本当に男性に尽くす女性でした。毎日マッサージしてくれ、お風呂では髪や顔を洗ってくれ、彼女の飼っていたネコのノミに私のお尻がいっぱい刺された時もお尻に薬を塗ってくれました。ただふとした時に彼女が漏らす言葉にドキッとしたり、彼女の幸薄そうな横顔に漠然とした不安を感じていました。「あなたにソープ行けって言われたら私ソープでもどこでも行くよ」そんなこと言う訳ないのにそういうことを口に出したりします。それが彼女なりの愛の確かめ方のかたちなのか、だんだんそんな彼女と自分のお互いを想う温度差を感じていきました。私は好きとか愛してるとか口に出して言うことに嫌悪感がありました。

彼女の成人式がやってきました。同じラウンジで働いている他のスタッフの娘はもちろんみんな振袖で成人式に参加しますが、彼女は在日韓国人のため振袖で参加するか、チマチョゴリを着て参加するか迷っていました。私は「振袖にしたらいいじゃん」と言いましたが、結局彼女はチマチョゴリを着て成人式に参加しました。他のスタッフの娘と一緒に写真を撮ってあげるときの彼女の少し寂しそうな笑顔を今でも忘れることができません。

数年彼女との付き合いは続きましたが、大学の卒業が近づいていたころには、彼女はラウンジをやめて実家に帰っていました。たまに私のマンションに泊まりにきていました。ある日私がマンションに帰ると、彼女からの手紙がテーブルに置いてありました。私と一緒に就職先の街に行くことはできないとの内容でした。それが彼女との最後です。私は悲しさとどこかホッとした気持ちもある複雑な気持ちで自分の荷物の引越しの準備を始めました。タンスから彼女のスカートやブラウスが出てきました。私は処分する布団の間に彼女の服を挟んでゴミ処分に出しました。まるで彼女をゴミ捨て場に置き去りにするように。

彼女がその後どんな人生を歩んだのか?素敵な人にめぐりあえたのか?子供はできたのか?全く分からない。ただまたどこかで出会うことができたらあなたのことが本当に好きだったことを今ならはっきり口に出して言える気がします。